ぜんそく征服ジャーナル

126号

アレルギーの話                              



■「アレルギーの時代は終わった」のです。

喘息は歴史の古い病気です。ヒポクラテスの時代から現在まで、多くの学者によって研究されてきています。近代医学が確立されてからも多くの喘息の研究がなされ、さまぎまな「原因論」が出ては消えるという歴史をくりかえしています。

現在では、喘息の原因はだいたい次のように考えられているようです。(久徳クリニック以外の医療機関での話ですよ。念のため…。)

小児の喘息の大部分はアレルギーが原因であり、大人でアレルギーがない場合は、体質が原因か、遺伝かもしれない。大気汚染も悪いが(特に、ディーゼルエンジンの排気ガス)本当のところはよくわからない……。

よくわからなくて、医者も困ってしまっているのに、患者さんは甘えているので、治療はしなくてはならない。仕方がないから、発作をおさえることに専念しよう……。

こんなパターンが今の日本の成人喘息の治療の現状であることは、ジャーナル96号でも紹介しました。

小児の場合は多少話がちがって、一応、「アレルギー」が原因とされています。

患者さんの約80%に、ダニとかホコリのアレルギーが認められるため、それが原因とされている訳ですが、立派な喘息であるにもかかわらず、ダニやホコリのアレルギーが認められない患者さんも約20%存在するという事実は、あまり検討されていないようです。

そして、この、かなりあぶなっかしい理論に基づいて、「喘息の原因はアレルギーだ」と言われ始めたのが約30年前で、現在まで言われ続けていたおかげで、今では「日本の常識!」のようになってしまっています。

過去の喘息研究の歴史の中で、さまざまな「原因論」が出ては消えていったのと同じようなパターンで、約30年間、「アレルギー原因説」がブームになっていたということなのです。

しかし、最近になって、この考え方は変わってきています。

小児喘息の研究をしている、本当の最先端の研究者の間では「アレルギーが原因だという時代は終った」という考え方が出てきているのです。

まだごく少数の、小児喘息に本当に造詣の深い先生たちが、ごく小声でそういう事を言いはじめたのです。(このあたりの話については、ジャーナル121号の5ページも見て下さい)

過去30年間以上の長きにわたって続けられてきたアレルギーの研究が、小児喘息の治療には大して貢献していなかったというショッキングな事実も判明してきているのです。

この事実は、まだ広く知られている訳ではありませんから、実際の医療の現場では「小児喘息はアレルギーが原因ですよ。」と、まだしばらくは言われ続けることになるでしょう。

でも、もう「アレルギーの時代」は、終わっているのです。

■それでも「アレルギー」の話
じゃあ、アレルギーのことなんかもう考えなくてもよいのかと言うと、残念ながらそうもいきれません。「アレルギーの時代が終わった」という言葉の主旨は「喘息の主要な原因はアレルギーだ」と考える時代が終わったという事であり、喘息とアレルギーは無関係なのだということではないからです。

アレルギーは、喘息の原因ではありませんが、喘息を構成する要素の一つであり、人によっては、「発作をひきおこす」原因にもなっています。ですから根治のためには、アレルギーに対しての正しい知識をもつことも大切です。

■もともとは「抗原抗体反応」

アレルギーというと、何かとんでもないことが体の中でおきているように考えてみえる方もいるようです。

たしかに、ホコリを吸うだけで息が苦しくなってしまっては「とんでもないこと」ですが、アレルギーの反応そのものは、抗原抗体反応といって、体を守るための免疫反応と同じものなのです。

アレルギーの話をわかりやすくするために、まず免疫反応について説明しましょう。

免疫反応というのは、文字通り、「疫病から免がれるための反応」であり、外界から体内へ侵入してくる、さまざまな病原体(細菌やウィルスなど)を退治するための生体防御機能の一つなのです。

医学的にはやや正確さを欠きますが、生体防御機能は、大きく二つにわけられます。
一つは、血液の中にある白血球により行われているもので、外界から侵入した細菌などを白血球か食べてしまうという反応です。

もう一つが、リンパ球と免疫抗体により行われているもので、これが、抗原抗体反応とよばれているものです。

この反応は、主にウィルスなどの病原体に対して働いています。

「抗原」というのは、体外から侵入してくるウィルスなどのことであり、「抗体」というのは、免疫抗体のことです。

この「抗体」という言葉は、みなさんもよくお聞きになると思います。たとえば、肝炎の抗体だとか、妊娠するまでには風疹の抗体をしらべておきましょうとか、最近では、エイズの抗体検査などという言葉もよく使われています。

この免疫抗体には、いくつかの種類があって、IgG、IgA、IgM、などとよばれていますが、いずれの免疫抗体も、体内に侵入してきたウィルスなどに作用してそれを殺してしま
う働きをもっています。

アレルギーとは、この抗原抗体反応が「体に害をなす」かたちで働くようになってしまったものなのです。

■好酸球とIgE
アレルギーをひきおこす直接の原因になるものは、血液中のIgE抗体と呼ばれるものです。

これは、前述のIgGなどの仲間なのですか、体を守るかわりに、アレルギー反応をおこしてしまうのです。

白血球の中にも、アレルギーに関与しているものがあり、好酸球とよばれています。(略語はEo)。こちらは、まだその働きが明確にはなっていません。

白血球を顕微鏡で見るためには、色素で色をつけて見るのですが、この白血球は、酸性の色素でよく色がつくので、好酸球と呼ばれています。

IgEの検査には二つの方法があります。一つは、血中IgEのトータルの量を測るもので、現在久徳クリニックが用いている検査法では、303以下が正常値です。
IgEの値は、アレルギー全体の規模をあらわしていると考えられ、喘息の重症度とも多少は関係があります。

もう一つの検査法は、IgEのトータルの値ではなく、各種のアレルゲン(アレルギーをひきおこす抗原)について、個別に調べる方法で、RAST(ラスト)法と呼ばれています。

この方法は、特定のアレルゲンと反応するIgEを測定するもので、何に対してアレルギーがあるかがわかります。現在では最も正確な検査で、多くの種類について調べられます。

好酸球の正常値は6%以下です。この好酸球は、血液中だけではなく、喘息の患者さんの痰の中とか、アレルギー性鼻炎の患者さんの鼻汁の中などにも存在します。

■どう対応するのか
いろいろな検査でアレルギーが証明されたら、対策を考えなければなりません。

対策を考える上で大切なことは、「そのアレルギーがどの程度症状と結びついているか」をまずはっきりさせることです。

たとえRAST法でホコリに対してのアレルギーが強々陽性だったとしても、あわててカーペットをはがし、カーテンをブラインドにかえて、毎日ぞうきんがけをするなどという、ヒステリックな対応をする必要はありません。RAST法で陽性に出た人でも、思いきりたくさんのホコリを吸うことさえ避けていれば大丈夫という人もけっこう多いのです。

こういう場合は、体質改善のくすりと、体質改善の注射(ジャーナル21、28号の減感作療法、74号の変調療法を見て下さい)をしておけば、まずアレルギー対策は大丈夫です。

かくれんぼをしていて、カーテンのかげにかくれたら発作になったとか、ふとんの上であばれたら発作になったりするような時は、家庭内のホコリやダニをへらすための努力が必要になることもあります。食物性アレルゲンが原因であれば、除去食を考えたり、経口的減感作(ジャーナル30、62号)が必要になる場合もあります。

いずれの場合も、くわしい問診と説明が必要になりますから診察のときに相談してください。

今の日本のアレルギーに対する意識は、過去30年間の「アレルギーのブーム」のためか、かなりヒステリックになっています。「血液検査で陽性だから、一切接触するな!」というような、まちがった指導を受けている患者さんも多いようです。

「心と体とアレルギー、あとは感染に気をつけて」という、総合根本治療法の基本概念をしっかり理解して、バランスのとれた、冷静な治療を心がけて下さい。(ジャーナルの19、20、43、73号等も参考にして下さい)

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