ぜんそく征服ジャーナル

142号

経過がいま一つよくない時〜自分自身の根本療法を見直そう          



■自分自身の根本療法を見直そう
今年も押し迫ってきました。読者の皆さんは喘息根治をめざして頑張っておいでのことと思います。寒い時期こそ鍛練のチャンスです。スカッと調子の良い人も油断しないで鍛練を続け来春をめざして下さい。

スカッと調子が良いとは言えずに、何となくダラダラしている人、相当良くはなってきているものの、まだいまひとつ経過が思わしくない人は今月号をしっかりお読みになって、できれば年内に、遅くとも来年中にはスカッとさせる方針で頑張りましょう。

今回は、おさらいの意味もこめ、経過が良くない時の検討法について考えていきましょう。

■喘息の現状
厚生省の調査によれば、平成5年度の全国の喘息の患者数は107万人で、昭和54年の40万人に対し約2.5倍に増加しています。喘息で死亡する大人の患者さんは全国で年間5〜6000千人にのぼります。

小児喘息の有病率は6%前後で、そのうちの約半数の患者さんは大人になるまでに自然治癒しますが(127号)残りの半数は大人まで持ち越します。

このように決して侮れない病気であるにもかかわらず、現在でも喘息は「わからない、治らない」病気とされています。

■身体医学の限界
身体医学、心身医学、人間形成医学についての説明はジャーナルの131号で詳しく説明してありますから、ここでは省略します。まだこの三つの医学の相違についてお分かりでない方は、先にもう一度131号をお読みください。

現在では、日本はもとより世界中が、身体医学中心の医療になっています。身体医学の発想で喘息を治療した場合の治療成績は、平成2年の厚生省成人気管支喘息実態調査研究班により次のように報告されています(ジャーナル96号にも詳しく掲載してあります)。

「呼吸器専門」といわれている全国の32の病院にかかっている、約2800人の喘息患者について調査したところ、10年以上治療を続けている人は全体の52.6%、その中でも20年以上治療を続けている人は25.8%だった。

呼吸困難を伴う発作が1年中起きている人は7割、ステロイドを服用している人は3割、入院したことのある人は6割認められた。

以上が、全国の32カ所という「よりすぐり」の「呼吸器専門病院」での治療成績の概略です。

身体医学的発想による対症療法だけでは、この程度の効果しかあがらないのです。

それにもかかわらず、患者さんの数は増えるばかりですし、成人では年間5〜6千人もの患者さんが亡くなられています。この事態に対して、身体医学は「もうどうすればよいのかわからない」という状態になってしまっていたのがここ数年来の状況でした。

■身体医学は再び迷い道に入っていく?
日本の身体医学的発想による喘息の研究が「アレルギー」に目が眩んで「アレルギー」という迷い道に入り込んで行った経過はジャーナルの137号にある通りです。最近になりようやくその迷い道からは抜け出しかけていますが、今度は前述のような「どうすればよいのかわからない」という、さらに深刻な事態が身体医学のお医者さんたちを待ち受けていたのです。

この深刻な事態を何とかしようとして身体医学は「最新の治療法」を「開発」しました。それは、「喘息とは気道の慢性的炎症性疾患である」という考え方の下に、吸入ステロイド剤を用いるという治療法です。しかし、この考え方は人間形成医学の立場からみると「最新の治療法」というよりも「新しい迷い道」に入っていくようなものなのです。

この、喘息を気道の慢性的炎症性疾患であるとする考え方は、米国国立心・肺・血液研究所が中心になって進めてきた「喘息の診断と管理に関する国際委員会」により1991年頃にまとめられたもので、確かに、喘息の複雑な病態の「一部」を解明してはいます。しかしながら、やはり身体医学的発想からの脱却はできていません。

かつての「アレルギー」という言葉が、「慢性的炎症性疾患」という目新しい言葉に置き変わったにすぎないのです。

治療方針も、ステロイド吸入薬に依存して「喘息をコントロールすること」が目標とされており、ステロイド吸入薬を無期限に使い続けるという方針になっています。

確かに、内服や注射に比べれば副作用ははるかに少なくなりますが、ステロイドは所詮ステロイドにすぎません。喘息そのものを治してくれる薬ではないのです。

もともと欧米の喘息治療は日本よりもはるかに遅れています。喘息を治すなどということは、すでに1970年代に諦められてしまっています(ジャーナルの62号を見て下さい)。

その背景には、欧米では日本以上に身体医学中心の医療になっていることとか、日本の様な充実した保健医療制度が整っていないなどの事情もあるのですが、欧米の喘息研究は「最小限の薬(医療費)で長期間喘息をコントロールするにはどうすればよいか」が最大のテーマになっているのです。

この発想は、完全に身体医学的な対症療法の考え方なのですが、前述のような状況で途方にくれていた日本の身体医学にとっては「渡りに船」でした。

このような事情で、日本でも2〜3年前から、吸入式のステロイド剤を連用する方法が「最新の治療法」として広まってきています。

今後しばらくの間は、この方法が「日本の常識」になっていくのだろうと思われます。そしてかつてのアレルギーがそうだったように、10年後か20年後には「やはり効果はなかった」と言われることになるのでしょう。

■総合根本療法の目指すもの
久徳クリニックでは身体医学的発想とはまったく異なった、人間形成医学に基づく総合根本療法を行っています。総合根本療法の詳細については、初診時にお渡ししてあるジャーナルの70号に詳しく説明してありますからここでは省略しますが、治療方針の根幹は次の「喘息征服の五原則」です。

@喘息の仕組を知っているか。

A原因を全て知っているか。

B原因の全ての治療をしているか。

C軽くなったからと、@〜Bをさぼっていないか。

D喘息再発の防止法を実行しているか。

そして、総合根本療法では、次の状態になった時に「喘息が根治した」と考えます。

@数年以上にわたって発作が現れないか、現れたとしても咳その他の微細な症状で、
A薬を使わないか、簡単な拡張剤で治まり、
B年間を通じて健常人と同じ生活が可能で、
Cアフターケアを行って将来の見通しを立てた場合に再発する可能性がまったくないか、 きわめて少ない場合。

平均的な治療期間は2〜3年で、順調にいった場合、初診後1年で患者さんの約80%、初診後3年で約90%までの患者さんは「根治の条件」のBまで到達し、それからアフターケアに入っていきます。

身体医学的対応では「わからない、治らない」とされている喘息であっても、人間形成医学的対応を実施すれば、ここまで治すことも可能なのです。

■ラクして治すのは難しい
総合根本療法は相当効果的に喘息を根治させうる治療法ですが、反面、医者にも患者さんにもそれなりの努力が要求される治療法でもあります。

ジャーナル131号の「上手な診察の受け方」にもあるように、従来の対症療法だけの治療でしたら、患者さんは医師に治療のほとんどすべてを「お任せ」していればよいのですが、総合根本療法では、患者さん自身が五原則にそって勉強していかねばならないのです。

患者さんは相当多くの事柄を覚えねばなりません。患者さんが覚えねばならない事柄のすべてを医者が説明するとしたら、概算ですが約40時間は必要になるほどです。

現在はこのジャーナルなどの「教材」を用いている分だけ時間は節約できていますが、いずれにしろそれだけの勉強をする努力が患者さんに要求され、医者の方には説明する責任が要求されるのです。

また、対症療法であれば、発作が起きた時だけ病院へ行くという診察の受け方でもよいのですが、総合根本療法では、変調療法や減感作も必要になりますし、何よりも前に述べた勉強が必要不可欠になりますから、調子の善し悪しに関係なく、定期的な通院が必要になります。遠方の患者さんの場合は定期通院だけでも相当に大変という事も起こり得ます。

■医者と患者さんの関係
総合根本療法では、喘息は患者さん自身が勉強して努力して「自分で治していく病気」であると考えています。医者と患者さんの関係はまさに「登山者とガイド」の関係なのです。

この関係は「予備校の先生と受験生」の関係といってもよいでしょう。

受験生が大学に合格したいのならば、予備校の先生の指導に従って努力して、合格するだけの学力をつけていかなくてはなりません。予備校に通ってさえいれば大学に合格できるというものではありませんし、予備校の先生が大学に入れてくれるのでもありません。

予備校の先生の仕事は「こうすれば希望校に合格できる」という作戦を考えることと、効率良く学力をつける授業をすることであり、その指導に沿って受験生自身が努力することにより、希望校に合格するという目標に到達できるのです。

総合根本療法における医者と患者さんとの関係もまったく同じです。

喘息を治すための専門医の仕事は「こうすればあなたの喘息を治すことができる」という作戦を教えることと、効率よく生活療法が充実していくように説明・指導することであり、その指導にそって患者さん自身が努力することにより、喘息を治すという目標に到達できるのです。

医者が喘息を治してくれる、薬が治してくれるなどという勘違いは絶対にしないようにくれぐれも気をつけて下さい。

■どこまで治したいのかをまず自分自身が決める
登山者にしろ受験生にしろ、何らかの目標に向かって努力する場合には、まず目指すべき目標を定めねばなりません。そして、目標が定まれば、どこまでの努力が必要なのかも自然に決まってきます。

喘息の治療を始めるにあたっても、治療の目標を設定することがまず必要になります。

目先の発作さえ治まればよいのか、深刻な副作用のない薬ならば続けてもよいから「一病息災」の発想でいくのか、それなりの努力をして総合根本療法の治療のゴールを目指すのか、自分はどこまで努力してどこまで良くしたいかを、まず患者さん自身が決めなくてはならないのです。(132号も見て下さい)

これは、レストランで料理を注文するのと同じです。一品料理からフルコースまでのメニューがあっても、お客さんがどのメニューにするかを選んで注文しない限り、店の方では料理を作り始めることはできません。

久徳クリニックの喘息治療もまず患者さん自身がどこまで治したいのか、この点をしっかりと決めていただくところから始まるのです。

この目標が曖昧だったり従来の対症療法の発想で総合根本療法を受けようとすると、治療はスムーズには進みません。

最悪の場合には患者さんはクリニックにくるたびに「叱られてばかり」ということになってしまいます。こうなってしまうのは患者さんにとっても医者にとっても不幸なことです。

治療の目標が決まれば、どんな努力をすればよいのかも自然に決まります。総合根本療法を行うと決まれば、あとは勉強第一、実行第二です。

■経過がよくないときの検討
これまでの内容をお読みになれば、経過のよくない時の検討法についても、ある程度はお分かりになると思います。

自分では努力しているつもりなのにどうもすっきりしないと感じられる時には、一度次の項目をチェックしてみて下さい。

@五原則を十分に理解して生活療法が充実しているか。特に自分自身の喘息の原因が把握できているか。発作の起こり方から原因を分析することができているか。原因分析に基づいた、具体的な根治の方針がわかっているか。
A勉強の体制は整っているか。
(1)ジャーナルを十分に活用しているか。25号までを一冊にまとめた合本が総合根本療法の「教科書」で、定期購  読で郵送されるものが「通信教育」です。積極的に活用してください。
(2)すっきりしない時こそ、平日に来院してじっくりと時間をかけた診察を受けているか。火曜と木曜の夜間、土曜、  日曜はアフターケアの時間帯です。この時間帯には時間をかけた説明、指導はできません。
B軽症難治状態(106号)なのに「ひどく苦しくなることはないから、日常生活に大きな支障はないから」と放置していないか。
C対症療法だけになっていないか。
薬でしのげるからといって、喘散、ベロテックだけをもらい続けるようになっていないか。喘散、ベロテックなどの発作止めが手放せないのに体質改善の薬とか注射を中止してしまっていないか。
D診察の時の医者との話の内容が発作の話ばかりになっていないか。
症状を医者に伝えるのももちろん大切なことですが、その症状に対しての正確な原因分析ができているかを医者に確認してもらうことは更に重要なことなのです。
E朝夕の鍛練は十分にできているか。
桶で5〜6杯の冷水浴と息切れがして汗はむ程度の運動ができているか。
喘息以外の病気があり、十分な鍛練ができない時の工夫について相談しているか。

鍛練はすべての患者さんに必ず効果のある、極めて大切なものです。
さぼらずしっかり頑張りましょう。

それでは皆さん、よいお年を!
                                  (重和)


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