ぜんそく征服ジャーナル

148号

 症例



症例

母親の実家へ行く時にのみ喘息発作を起こす中学生

A君が喘息の治療のために当クリニックへ来院されたのは今から三年前のことで、A君が、14才の時です。
A君の喘息の発病は6才の時で、発病から来院までの喘息発作は必ず母親の実家へ行く前の夜か、行った日に限られていました。年に5回行けは喘息発作も5回起き、年に1度も行かなければ喘息発作も1回も起きないという状態でした。
A君宅は母親の実家と比較的付き合いが多く年に7〜8回は行っていました。それでもA君の喘息は他の喘息の人よりも軽いため、母親は喘息の発作の出方には気をとめず、発作時の対症療法のみをしていたのです。
喘息発作の出る時が母の実家に関係があるときのみというように完全に限られているという点で非常に変わった喘息でした。
アレルギーが関与したものならば母の実家に行ったときのみ発作を起こすのですが、行く前の夜から発作を起こすことからアレルギー的な喘息の可能性は否定されます。また、季節を問わず発作が起こる点から体のバランスの崩れによる喘息の可能性も否定されます。
A君を診察した第一印象は、野球好きのスポーツマンで体格もしっかりしており、とても喘息児とは見えませんでした。
このような場合でも、総合医学的な立場に立つと原因の発見は容易なものです。
A君、母親との診察の中で次のようなことが分かりました。
A君一家はA君が5才の時まで母親の実家で祖父母と同居していたのです。この頃、母親は仕事をしておりA君は祖父母に育てられました。祖父母のA君に対する養育は孫ということもあって、欲しいものは何でも買い与え、少し寒いといっては外へ出さずに厚着にし、危ないといっては活発な遊びを禁止するなど、俗にいう過保護・溺愛の養育でA君は友人も少なく消極的で家の中で静かな遊びを好むタイプの子供になってしまい、よくカゼをひきやすかったことなどがわかりました。
その後、A君が6才の時にA君一家は父親の転勤で祖父母と別居し、母親も仕事をやめたので、A君は母親に育てられました。A君の転居先は友人も多く母親もイキイキとした明るい方だったので、A君は、外遊びの好きな友人の多い、元気なスポーツマンタイプの子に育ってきたのです。
しかし、A君に対する祖父母の養育態度は今も変わらず、A君が来るたびにごちそうを作り、多額の小遣いを与え、少しの寒さで厚着にするなど過保護、溺愛の傾向は全く変わっていませんでした。また、そんなに楽しみを持たない祖父母は学校が休みになるのを待ちわびて、A君をよく自宅へよぶのでした。A君自身甘やかしてくれる祖父母宅へ行くことに対して内心楽しみにする面も多くあったのです。
このA君が祖父母の家へ行く時には甘えてしまうということがA君自身の喘息の原因だったのです。
大人の喘息の基礎は小児期に既に形成されてしまうということは、今まで何回もお話していることですが、A君の場合小児期に極度に甘やかされてしまい、その甘えという心理的な状態によって自律神経のバランスが乱れ喘息発作が起こっていたものが、大人になってたくましくなってもまだ完全には改善されずに残っており、そのために祖父母宅へ行くと甘やかされるために、やはり自律神経のバランスが乱れ、ほぼ大人といえる現在まで喘息発作を起こしていたのです。
このことからもわかるように喘息根治の特効薬は、少々のストレスにはまけない、常に心身をイキイキさせることのできる、たくましい人間形成をすることが一番大切なことなのです。




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