ぜんそく征服ジャーナル

158号

症例:副腎皮質機能不全を克服したお二人

当クリニックの全身性ステロイドホルモンからの離脱率は75%程度ですから、4人に1人は離脱できないことになります。離脱できない原因として最も深刻なものは、全身性のステロイドを使いすぎて患者さんの副腎が働かなくなってしまう「副腎機能不全」です。

今回ご紹介するのはこの深刻で重症な副腎機能不全を劇的に改善さてしまったお二人の患者さんです。

二人の患者さんはいずれも壮年の働きざかりの男性でした。仮にA氏、B氏としておきましょう。

クリニックでは初診時に病歴聴取や喘息の仕組の説明、治療方針の説明などの問診を行いますが、この問診中にA氏は急に泣き出されてしまいました。というのは、A氏が、約10年前に、初めての喘息発作で大学病院に行った時、そこの医者から、「あなたは、気管支喘息です、この病気の原因は解らない。一生治る事はありえない。廃人になったと思って生きなさい」といわれたとくやしそうに云うのです。それが、喘息の仕組み、治療方針、発作ののり込え方。薬の使い方などを聞いて、今までの治療の誤りに気付き、くやしくてつい泣けてしまったといわれます。

しかし、今まで続けていた治療法を聞いて、今度はこちらが困りました。何と大学病院の初診の時から内服のステロイドホルモンを投与されており、それ以外の治療は何もしていなかったのです。

それでとりあえずクリニックの基本となる薬を処方し、一週間後に副腎皮質機能検査としてみました。その結果は思った通りに副腎機能はまったくゼロに近い位働いていませんでした。

副腎機能検査は略してラピッドテストといいます。前日午前9時から絶飲食として翌日の朝10時から検査をします。
まず採血をして11OHCSという副腎皮質ホルモンの代謝産物を測定します。直後にACTHという、副腎皮質を刺激するホルモンを注射して、30分後と60分後に採血をして11OHCSの量を測定し、ACTH注射によってどの程度11OHCSが増えたかを測定します。
正常の場合は、ACTHを注射する前の11OHCSを基準として、30〜60分後の11OHCSが、基準の2倍から4倍になります。A氏の場合この基準値そのものが、正常値下限ギリギリで、30分後も60分後もまったく増加反応を示しませんでした。A氏の副腎は全く機能していない状態に近かったのです。
それでも、喘息の仕組みと治し方が理解できたA氏は、落胆する様子もなく非常に真剣に喘息治療に取り組んでいます。

副腎機能不全があり、いつ発作が起こるかわからない状態ですので、常にステロイドホルモンを携帯させ、常用している薬で効果がなかったらすぐにステロイドホルモンを服用する様に説明もしておきました。

クリニック受診後発作らしい発作はほとんど出現しなくなりました。副腎皮質機能検査は、月に一回しか出来ませんので、副腎機能の改善も一ヶ月たたないとわかりません。

それでも、はじめはほとんど増加のなかった反応が、徐々にですが改復してきたのです。

そして最終的にはほとんど正常人のレベルにまでも改善してしまったのです。

私の長い喘息治療経験の中でも、これほど劇的に副腎機能が改善した例はほとんどありませんでしたから、どのような努力をなされたのかを尋ねてみました。すると次の様な答えが返ってきました。

「先生に、副腎機能が悪いといわれた時、俺は他の人と同じ事をやっていては足りない。先生は冷水浴をしろといわれた。それなら俺は氷水をかぶろう」と決意して大きなポリバケツに氷屋から買った氷で氷水を作り一日朝と夜に必ず5〜6杯ずつ全身にかぶっていたといいます。

はじめの朝は骨の髄まで体が冷えきってしまったとの事でした。それが、氷水浴をくり返しているうちに、かぶりおわったあと体がポッポ、とほてる様になったといいます。この現象があらわれる頃から副腎機能もよくなってきたと思われました。

もう1人のB氏はA氏とは対照的でした。副腎機能が悪いのはB氏と同様でしたが、B氏は心理的に前向きヤル気になって克服したのです。

B氏が来院された頃から中国との国交がかなり自由化されてきていました。B氏は新しく貿易の仕事を始め、ここぞとばかりに中国全土を飛びまわるようになりました。

何しろスケールが日本とはケタ違いに違います。出張片道3日間という中国全土を必死になって飛び回っているうちに、徐々に副腎機能が回復してきたのです。
「先生、喘息どころじゃないよ。毎日が戦争みたいなもんだ」という生活からの刺激が副腎皮質を刺激して副腎の機能回復をもたらしたと思われました。

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