ぜんそく征服ジャーナル

166号

人間形成医学からみた小児喘息



■多因子性疾患としての喘息
喘息は歴史の古い病気です。医学の租と言われるヒポクラテスは「喘息になったら怒りを鎮めよ」と語ったと伝えられていますが、人類と喘息とはすでに2000年以上の長いお付き合いがあるのです。

喘息の原因についての近代医学的な研究は、アレルギー研究の黎明期でもある19世紀末に始まりました。そして、20世紀になり、ピルケやコカの説いた「アレルギー説」、ヘスやエッピンガー、日本では瀧野先生の説いた「自律神経説」、フロイトやアブラハムの説いた「精神心囚説」の「病因に関する三大説」が形成されました。

現在でも大勢の喘息の患者さんに話を聞きますと、確かに発作のきっかけは様々です。季節の変わり目、寝入りばな、明け方、温度変化、雨とか台風の前、運動、月経の前などに悪化することもありますし、家のホコリ、動物の毛とかフケ、ソバなどでも悪化します。かと思うと、週末、仕事が終わるころ、行事の前後、入学、進学、就職、結婚、出産、定年などをきっかけにして悪化する患者さんも珍しくありません。

医学には身体医学と、心身医学、そして第三の医学である人間形成医学があるということはジャーナル131号などでもすでにお話していますが、喘息を身体医学の立場でとらえると、「喘息の原因は気道の慢性的炎症であり、根治は不可能で、ステロイドの吸入で抑えるしかない疾患」になります。

心身医学の立場からとらえると、「心身症として治療するべき疾患」となり、自律訓練法とかバイオフィードバック療法などの心身医学的治療が行われます。

これらの考え方からさらに一歩踏み込んで、「喘息の原因は単独ではなく、心理的な要素、生理的な要素にアレルギーも関わって引き起こされる多因子性の疾患であり、生活習慣病とも言える病気である」と考えて、人間形成医学の立場から喘息をとらえて、根治をめざす治療法が、久徳クリニックの「総合根本療法」なのです。

小児喘息の発作のきっかけ
小児喘息の主要な原因はダニなどのアレルギーであると言われていますが、詳細に発作のきっかけを調べてみると意外な事実がわかります。

アレルギーだけが発作の原因になっているという小児喘息は調べてみると極めて少ないのです。

かつて久徳クリニックで実施した、432名の喘息児についての調査では、発作のきっかけとして、アレルギーは全体の80.8%、心理的要因は全体の81.9%、生理的要因は全体の92.4の患児に関与していました。

アレルギーよりも心の問題とか体の問題の方が高い割合で関与していたのです。

単一の要因だけが関与していた喘息児は全体の6.5%に過ぎませんでした。

そのうち、心理的要因だけが関与していた患児(完全な心因性喘息)は全体の1.6%、生理的要因だけが関与していた患児(鍛練不足だけが原因の喘息)は4.4%、アレルギーだけが関与していた患児(完全なアレルギー性の喘息)は0.5%に過ぎませんでした。

完全な心因性の喘息は相当に珍しいものなのですが、完全なアレルギー性の喘息は、その心因性喘息よりも更に少なく、200人に1人の割合でしかいないのです。

この結果は、「アレルギーだけが原因になっている」小児喘息の患者さんは、200人に1人しかいないということを現しています。

つまり、アレルギーの治療だけで改善が見込まれる患者さんは、200人に1人しかいないということなのです。

心理的要因、生理的要因、アレルギーの3つの要因すべてが関与していた患者さんは、全体の61.6%でした。

小児喘息では、ダニなどのアレルギーについての治療だけではなく、心理的要因や生理的要因についての治療も必要とする患者さんが過半数を越えているということなのです。

このことは小児喘息の根治をめざした治療を行う上では、極めて重要な忘れてはならない事柄なのですが、残念なことに現在の身体医学を中心とした医学では、殆ど考慮されていないのが現実です。   

ぜんそく征服ジャーナル

166号




Copyright(C)2008 Kyutoku-Clinic. All Rights Reserved.