人間学誌『致知』 /2000年12月 致知出版株式会社発行



トップ対談  小田晋×久徳重盛

◎特集 ◎父性と母性

その少年は母1人子1人であった。
学校の授業参観で母親は、「うちの子は親思いで、こ飯も食べずに私の帰りを待っているんですよ。本当に親孝行なんです」と話していた。
ところが少年が中2の夏休み、その母親が出奔した。少年は来る日も来る日も母の帰りを待った。
そしてある日、これでもう母は帰ってこないと自分なりに判断した時、少年は箪笥から母の物すべてを取り出し、風呂敷に包んで浜辺に行き、燃やした。以来、少年から一切の意欲的なものが消えていった。そして、虚ろな心を暴力などで紛らわすようになった―。
子どもにとって母親というものがいかに大事な存在であるかを、この実話は物語っている。
母性の欠如は子どもの人格をはなはだしく損なっていくのである。
いま、母性の喪失がいわれている。それに付随する父性の欠落も同様である。 最近頻発する異常な事件は、その反映と言えよう。
一つの犯罪が起こる背後には、何万という同質の予備軍が控えているといわれる。
これまで日本人の間に暗黙のうちに伝承されてきた父性母性の原理を、 私たちははっきりと訴えていかなければならない時にきている。

なぜ十代はきれるのか。
なぜ父権は失墜し、母性は失われたのか。
そして、この危機を乗り切るには?

この混乱はどこから来たのか

少年たちによる犯罪が日本全土を覆っている。
エジプトのミイラの棺に記されているように、いつの時代も若者は大人にとって未熟な存在であった。
だが、現代の犯罪の顕れ方は異常としかいえない。 このような少年たちを育んだ土壌は何か。解決の手立てはあるのか。
喘息治療では日本一の名医と謳われ、 ベストセラーとなった『母原病』の著書でも知られる久徳先生と精神科の臨床医でもある小田先生に語り合ってもらう。




久徳クリニツク理事長・院長
久徳重盛 きゅうとく・しげもり

大正13年愛知県生まれ。昭和24年名古屋大学医学部卒業。同大小児科に勤務。35年喘息研究を開始。小児科に喘息治療センターを開設。46年愛知医科大学教授。54年喘息征服の診療に専念するために退職して久徳クリニツクを開設。現在同院院長。著書にベストセラーとなった『母 原病』『愛欠症候群』『学校ぎらい』などがある。


国際医療福祉大学教授
小田晋 おだ・すすむ 

昭和8年大阪府生まれ。岡山大学医学部卒業後、東京医科歯科大学大学院修了。矯正施設に勤務後、39年に同大学犯罪心理学研究室助手となり、犯罪精神医学者の道を歩む。52年筑波大学教授となり、平成9年から国際医療福祉大学教授。筑波大学名誉教授。医学博士。著書に『日本の狂気誌』『権力者の心理学』『大人社会のいじめを心理分析しよう』などがある。




詳細・・・・・1.子供を騙すのがうまかった 詳細・・・・・6.事件の前に引きこもり生活がある
詳細・・・・・2.学校教育の問題ではない 詳細・・・・・7.集団生活をさせるのが一番いい
詳細・・・・・3.「母原病」が子どもの病気の60パーセント 詳細・・・・・8.人のためになるという経験がない
詳細・・・・・4.「問題の子ども」と「問題の大人」 詳細・・・・・9.便利な子どもがいい
詳細・・・・・5.15歳になれば大人  詳細・・・・・10.草の根運動に期待する



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