■「三つ子の魂百まで」は本当だ   

人間というのは脳がつくられながら育つ動物なんですよ。人間を育てるということは脳を育てるということで、0歳から6歳までで3番目までの脳がつくられて、ここで人間の基礎ができる。
1番奥の脳 A が、心臓が動くとか自立神経の調子をつかさどる反射調節の脳です。それから2播目Bが本能的な脳の働きで、3番目 C が躾だとか育児、家庭教育、社会教育といった人間形成の脳です。ここまでが人間の基礎で、建物でいえば土台なんです。そして、6歳から10歳、15歳までというのは・大人の基礎 D をつくるいわば本建築の時期で、本建築が完成するのがだいたい15歳です。まさに昔でいう元服で、男の子なら声変わりする。女の子は月経もちゃんとここまでに現れて、動物としてはここで大人なんです。 

ところが、歪んだ育てられ方をして、人間の基礎をつくる6歳までに心身ともにたくましく育てられていないと、土台ができていないので、本建築が完成するころに、本建築の重みに耐え兼ねて、10年前につくった第三の脳が壊れてくるんです。第三の脳は人間性の脳ですから、その脳が壊れた結果が15歳前後とか、さらには成人後にも、いろいろな人間形成障害として出てくるわけです。昔から「三つ子の魂百まで」という言葉があるように、三つ子の心と身体をダメに育てると、その結果がずっと尾を引くわけです。具体的にどういう現象が現れるかというと、歪んだ育てられ方をすると、赤ちゃんのころにまず言葉遅れが出てきます。昔は大家族だったので、赤ちゃんは生まれたその日から、周りには祖父母も両親も兄弟もいて・極端にいえば、言葉の渦の中で育ったわけです。だから、ちゃんと言葉を喋るようになった。ところがいまは核家族で、お父さんが働きにいってしまうと、お母さんと子供だけになってしまう。ほとんど言葉のない世界で生活するわけです。そうなると、人間は言葉を喋るものだという人生の最も基本のところの体験がないので、どうしても言葉が遅れるわけです。

3歳ごろまでに、自律神経の調子が狂った子に育つと、自家中毒だとかアトビーだとかぜんそくといった病気になる。ぜんそくもアトビーも体質病ですから、いくつかの原因が重なって出てくるんですが、その一番基になるのが自律神経の働きが悪いこととホルモンの働きが悪いことなんです。

その他、夜尿症とか心身症といった症状も出ます。

ハーローという学者の猿の実験があるんですが、子猿のときに愛情のない育てられ方、杜会性のない育てられ方をされると、その子猿は青年期になったときに、落ちつきなく動き回るか、無気力に座り込んだりしてしまうという結果が出ているんです。落ちつきなく動き回るというのは、人間でいえば、暴走族だとか非行化になる。無気力に座り込むというのは、登校拒否とか閉じこもりです。さらに、その猿が大人になったときに、雄猿はセツクスの仕方も異常になってくる。雌猿は子供は生むけれども、子供の抱き方も知らないから抱かない。産みっぱなしになる。つまり、子育てができなくなるわけです。

猿の実験と同じことが日本ではこの30年間に顕著に現れていて、人間の基礎や大人の基礎ができないまま子供たちが成長すると、成人して社会に出ていっても、転々と職を変わって結局働けない。働くことはできても、結婚できないとか、結婚はできるけれども、子育てができないということになるわけです。

この子育てができないというのは、加速度的にひどくなっています。子供に対してガミガミいう、殴るというのは日常茶飯事で、中には虐待する、それから殺してしまうという場合もある。そういう親に対して、これらは全部積極的な敵意であるという話をしましても、殴らなければ自分の気が済まないという親もいますね。自分の精神衛生のために子供を殴っている親がいっぱいいるのです。文明国になると、未熟な親が増えるんです。

それがある時点で親子の力関係が逆転したときに、今度は親が子供に逆襲されるわけです。子供のころにガミガミいわれて育っている子供は、親子関係というのはお互いに攻撃し合うことだということを覚えて、10歳過ぎになって親よりも力が強くなってくると、そのしっぺ返しをする。それが家庭内暴力です。家庭内暴力のパターンはいろいろで、お父さんには暴力を振るわないで、弱いお母さんに暴力を振るう。それがさらにひどくなると、父親にも振るうようになるとか、ものを壊すとかになる。


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