よくある質問

■その他の心の問題

【Q】心療内科と精神科の違いを教えてください。

心療内科と紛らわしい呼び名に「神経内科」「神経科」「精神科」があります。心療内科の詳細については、別の項目で説明していますからそちらをご覧下さい。

 「神経内科」は、「脳と体の隅々までに張り巡らされている神経」を診察する内科です。消化器内科が消化器という臓器を専門として呼吸器内科が呼吸器という臓器を専門とする内科であるように、神経内科は「大脳(中枢神経)から末梢神経」までの神経という臓器を専門とする内科ということになります。
具体的には、脳梗塞・脳出血などから、アルツハイマー病、パーキンソン病、脊髄小脳変性症、筋萎縮性側索硬化症、アルコール性脳障害などのさまざまな神経疾患の治療を行います。

 「神経科」は「精神科」とほぼ同じ意味で使われています。ここでは両者をまとめて「精神科」と呼ぶことにします。
精神科は基本的には、統合失調症とか躁うつ病などの「精神疾患」を診察する科といえます。古くからの慣習で例外的に「脳そのものの病気」であるてんかんの診察も行われています。そして最近の神経症などの増加につれて、神経症の患者さんを診察することも増えてきています。

精神科というと、「心理分析とか精神分析などのカウンセリング」が行われるというイメージが強いようですが、現在の精神科では心理分析などはあまり行われないことが多いようです。その理由は精神科の中にも治療方針が異なるいくつかの「流派」があることによります。この流派を大きく分けると、「精神科学的精神医学」と「生物学的精神医学」の二つに分けられます。

「精神科学的精神医学」は、患者さんの感情の乱れや人間関係の軋轢、生活環境の影響などを診察して治療する精神科で、分析心理学、力動精神医学、社会精神医学などの分野を含んでいます。フロイト博士が提唱した「自由連想法による精神分析」の流れを汲む歴史のある精神医学で、カウンセリングを利用して患者さんの葛藤とか生きる姿勢を調整します。薬よりもカウンセリング重視といえます。

「生物学的精神医学」は、抗精神病薬の開発が始まった1950年代から研究が始まり、現在では精神科医療機関の9割以上を占める精神科の主流の流派です。
この精神医学では、精神科学的精神医学のような精神分析とかカウンセリングなどの治療はあまり行われず、脳の働きを薬でコントロールする「薬物療法」が治療の中心になります。
精神疾患を「脳という臓器の異常」と考え、セロトニン仮説などの理論に基づいて脳内物質を薬で調整する薬物投与が治療の主体になるのです。ですから「精神医学」という名称がついてはいますが実質的には精神薬理学に基づく「身体医学」ということになります。
そしてこの精神医学では、心身医学の「治療の3本柱」である「自律訓練」「交流分析」「行動療法」などはほとんど行われません。統合失調症とか躁うつ病、てんかんなどの治療には「強み」を発揮しますが、不登校とか新型うつなどの治療には基本的に向いていないことになります。

以上のような理由から、精神科と心療内科を比較する場合には、その精神科の「流派」を確認する必要があるということになります。精神科学的精神医学の治療方針は心療内科と共通する部分がありますが、生物学的精神医学と心療内科ではその治療方針は相当に異なっているからです。

ネット上では、「現状では両方の診療科名を掲げているクリニックが多く、実質的にはどちらも同じと考えて差し支えないと思います」などというトンデモナイ書き込みも認められます。これは全くの大間違いですから誤解しないようにしてください。

 それでも巷には「精神科・神経科・心療内科」と書かれた看板がよく見られます。「名ばかり心療内科」とか「なんちゃって心療内科」などと揶揄する心療内科医もいるのですが、このようなことが起きてしまう背景について、以下に記載しておきます(久徳重和著「人間形成障害」からの引用です)。

精神科と心療内科の区別が判然としなくなったもう一つの理由として医療機関の診療科表示の問題がある。今の日本では法律で定められた診療科名(標榜科という)であれば、医師の経歴とは無関係に表示してよいことになっているのだ。たとえば心臓外科が専門であっても、開業するときには「内科・循環器科・小児科」という看板を掲げることができてしまうのである。
似たことがメンタルケアの現場でも起きている。精神科の医師が開業する際に「敷居を低くする」目的で専門外の「心療内科」も看板に掲げることがしばしば行われているのだ。
全国的な状況までは筆者も知りえないが中部地方では過去に問題になっている。「日本心身医学会50年史」の中部地方のページでは「精神科に関しては最近多くの医師が心身医学会に参加した経験も無いまま開業に際してメンタルクリニックや心療内科を標榜し、保険では精神療法を算定するという現状にある」と苦言が呈されている。
心療内科の専門医はほぼ必ず身体医学の専門領域を持っているから、看板にはその身体医学の科名も掲示されていることが多い。たとえば筆者のクリニックの看板は「アレルギー科・呼吸器科・心療内科・小児科・内科」であるが、これが本来の心療内科の看板である。「精神科・神経科・心療内科」という看板は原則的にあり得ないということになる。このような看板の医療機関の大多数は精神科(精神科学的か生物学的かまでは分からない)であり、心療内科の専門医がいる可能性は極めて低いといわざるを得ない。



Copyright(C)2008 Kyutoku-Clinic. All Rights Reserved.